2018年10月12日金曜日

2016年秋の瀬戸内旅② ~尾道の夜~

前記事と同じくfacebookですでに公開してあった2016年10月12日の旅の思い出です。

尾道の夜は意外にも最高だった。旅に出る1週間前までは、この日の宿泊先を福山にするか尾道にするかで迷っていた。尾道にしたのは、観光地として有名なことと、明日訪れる広島に近かったことによる。

宿についてもさほど期待しておらず、実際に大した宿ではない(それでも水準以上だと思うけど)。夕食も、下調べの段階ではとくに食べたいもの/行きたい店が見当たらず、駅前にチェーン店でもあればそこで済ませようかと思っていたくらいである。

来てみて初めて知ったけど、尾道には商店街の広い道とクロスして、私が1人やっと通れるほどの狭い路がいくつもあり、なおかつそこに店が点在している。






だいたいの店は20時台には既に閉まっていたけれど、宿から至近の「小鉢」という居酒屋が開いていた。そこと、その狭い通りを抜けたところにあるラーメン屋「クラウン」に、強いて言えば興味をひかれた。

さんざん迷い、何度も両店の前を往復したが、「小鉢」が店外に出していたメニューに「ちょい呑みセット 1500円」とあるのをみて、まあ、取り敢えずこれでお茶を濁して、それから「クラウン」でラーメンと焼き飯でも食べるかと決めた。「小鉢」には、居酒屋評論家として有名で、私も尊敬して止まない太田和彦師も訪れたことがあるというクチコミにも興味をひかれた。



店に入り、店と店主の佇まいを見て、この店にお世話になることに決めた。両者からは、そこはかとない味わいが染み出していた。

「ちょい呑みセット」は舞茸とゲソの造りであったので、それを熱燗で飲み下し、追加で冷酒と「土瓶蒸し」と「揚げ出し茄子とモチ」をたのむ。



土瓶蒸しというと、割烹の息子に生まれた私には良くない思い出がある。客の中には、土瓶の中身を全く食べない人が一定数いるのだ。出涸らしかと思ってしまうのだろうか。

「小鉢」のそれには、松茸がたっぷり入っていた。「国産ではない」と、予め店主からアナウンスされた。そんなことはどうでもいい。私はあなたの土瓶蒸しを食べようと思ったのだ。中には鱧や銀杏も入っていて、とくに銀杏の柔らかさ、臭みのなさは絶妙だと思った。もっというと、僕は今まで土瓶蒸しというものを好んで食べたいものと思って来なかったが、これが味噌汁同様に、日本酒にとても合うものだと今日初めて知った。日本酒通の間では、たぶん既に有名なのだろうが。

ご主人との間に会話はなかった。私からも振らなかったが、会計の後、どうしても言いたくて、とくに土瓶蒸しはすばらしいと思いましたと伝えた。

次にラーメン屋「クラウン」。事前の情報がなければまず入らない外見である。また、「食べログ」での評価の高さは知っていたが、期待はさほどしていなかった。というか、言われているほどの味じゃないだろうなと、経験的には感じていた。自分でいうのもおかしな話だが、僕を仰け反らせるほどのラーメンを出すのは難しいのだ。

ドアを開け、2130過ぎの店内で白と黒のハンチングを被った老夫婦が一つずつのラーメンと1皿の餃子をつまんでいるのを目撃し、感嘆の声を押しこらえた。この一事を以てしても、ここが名店であることは疑いようがなかった。


味噌バターラーメンをたのんだが、味云々などどうでもよいのだ。この旅はすばらしい旅としてここに確定した。

「小鉢」でも「クラウン」でも、広島カープのプレーオフの録画映像を流していた。ぜひ日本一になってほしいものだ。否、既に十分日本一かもしれないかもしれない。

最後に、駅近くの居酒屋「すからべ」でプリンをテイクアウトした。

ホテルに向かう道で、「プリンテイクアウト可」の看板を見て興味を持った。でも、居酒屋でプリンだけテイクアウトは申し訳ない気がした。だから本当は「小鉢」か「すからべ」かで大いに迷ったのだ。結局今回は「小鉢」に入り、「すからべ」のプリンはテイクアウトにしたが、私としてはこれはto be continuedのつもりである。


尾道にはいつか必ず再訪するであろうし、その時にはぜひ「すからべ」を訪れたいと思う。

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