2015年8月17日月曜日

進者往生、退者無間 ~身延線沿線を歩く③~

もともとこの旅を思い立ったのは、市川三郷町に「みたまの湯」というよい温泉施設があると耳にしたからである。その最寄駅が甲斐上野駅で、身延線の駅だという。身延と言えば久遠寺だろう、という感じで旅のルートがつながった。

ところで、この身延線、沿線の風景がどうもイマイチであるように私の目には映った。カソカソしている。同じ過疎地域でも、例えば紀勢線などは、一方に紀伊山地のスクッと林立する美しい杉林、他方に海岸線の変化に富む太平洋と、本当に文句のない美しさなのだが。身延線は、どうしても人の営みがダラダラと続いて見えてしまう。そして、これは偏見なのだろうが、公共事業によるコンクリートが他地域よりも過剰な気がするのだ。金丸信がどうしても脳裏にちらつく。この国の現在をまざまざと見せつけられているようで、鬱々とした気分になってくる。

1250頃、甲斐上野駅に着く。駅の構造からして無人を前提としている。駅舎は全面待合室である。ここで昼食。


駅から600mほど歩いたところにある「とんとん」。ご覧の店構えだが、名店だということはリサーチ済みだった。1300くらいに着いたけど、けっこうな行列。1310頃に店内に入るも、中は広く、さらに待たされる。

厨房には、麺をゆであげる大ベテランのご主人と、おそらくはその奥さん、さらにその娘さんと、そして、お孫さんと思われる夏休み色に濃く濃く色づいたころころと小生意気げな小学校3、4年生くらいの男の子。彼のなにが良いかって、必死な感じを見せず、しかしきちんとお手伝いをしている。ちゃんとおじいちゃんたちのお役に立てている。慣れているのだろう。その点、同じ飲食業の家に生まれながら、店の手伝いが本当に嫌で嫌で仕方なく、ついに家業を継ぐことのなかった私とはまるで違う。こういう店で手伝いをする子どもに、つい目が行ってしまうのはそのためだ。


「とんとん麺」というのを注文した。麺は喜多方風の平打ち。きちんと調べなかったけど、このチャーシューがウリなのだな。確かにとても旨い。

夏休みのせいか、店内にはお子さん連れが多かった。小学生野球チームのメンバーが9人以上大挙してお母さんたちと一緒に店に入るのを横目に、1340頃、私は店を出た。

ここからがたいへんだった。

またしてもポータブル充電器を忘れてきてしまった私は、スマホの充電を気にしながら「みたまの湯」に向かうことになる。不案内な地で、Googleマップなんかが使えなくなったら、冗談ではなく本当に生存に関わる。「みたまの湯」へは、アプリをたよらず、道路標識を頼りに向かうことにした。

が、裏目に出た。ものすごく遠回りをさせられた。

「とんとん」から「みたまの湯」までは、最短で2kmほどのはずだ。が、道路標識をたよって歩いたら、まず甲斐上野駅の隣駅である芦川駅まで歩かされてしまった。こんなルートのはずがないと気がついてはいたのだが、ここでスマホアプリを使うと、おそらく夜まで電池が持たない。

しかし、転んでもただでは起きぬもので。



とても良さそうな喫茶店を発見した。「茶話堂 Shion -詞音-」とか。絶対良い店に決まっているよ、これ!残念ながらこの日は休み。その後ネットで調べても全然情報がない。謎の名店。興味は尽きない。


さすがに甲府盆地。ブドウ畑が多い。でも、鳥よけのマネキンの首が怖い。



他にも、山道には興味深いものがいろいろあったが、しかし目的地になかなかたどり着かない。


まさかあの山のてっぺんにあるアレじゃないよね?と信じたかったが、事実としてはアレで正解でした。


ゴールである建物が見えたときには思わず声を上げて笑ってしまった。そうせずにはいられなかった。


「みたまの湯」着は1540頃。「とんとん」を出て、実に2時間歩き通した。

確かに絶景の湯である。甲府盆地が一望される。とくに、露天風呂。ガラス張りなので、内湯からも景色は見られるが、外に出るとまるで違う。まず、太陽が熱い!そして風が気持ちいい!それらを直に皮膚に感じることができる。裸なんだからまったく当たり前のことを言っているわけだけど、だからこそ体感しておきたい。当然、だからスルー、というのは間違いである。

しかしここは自動車で来るところだねえ。間違っても徒歩じゃないな。平日ならば甲斐上野駅から送迎バスが出ているのだが。


桃のかき氷などいただく。注文してもなかなか出てこないから、忘れられたのかと思った。しっかり手が込んでいた。


1740頃、次の目的地へと下山。

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